社会科授業づくり講座 9月講座
日 時: 2022年9月18日(日)10:00~13:00
方 法:Zoomによるオンラインで実施(参加ID等は後日連絡します)
参加費 : 500円(学生または年間費をお支払いいただいている方は無料)
テーマ 「生徒に自分ごとの学びを促す授業」
講師 平井 敦子 さん(札幌市立中学校教員)
問い合わせは歴史教育者協議会https://www.rekkyo.org
2022年度9月講座 感想まとめ
1.講師平井敦子さんから
報告の機会を与えていただきありがとうございました。日常の授業というより、ちょっとだけ特別な授業ではありますが、みなさんの疑問に答えながら、自分でも実践を客観的にみることが少しできたように思います。
余談ですが、先日地理の授業で、中2の生徒に「東京」に関してテレビを毎日見てるかな?週刊誌など雑誌を買っているかな?ときくと、本当に今はそういうことをしていない。情報は、全国、全世界から発信されるYouTubeなど。一昔まえなら、新聞社や出版社名、テレビ局、地名のいろいろを地図帳で発見すると「あ、知っている!」と親近感がわくのですが、この反応もとても低くなってきました。
常に、生徒にじぶんごとにしていくには、こちらも、毎回、考えなければなりません。日々、考えること、これが授業づくりだなあ、と思います。
2.参加者の感想
<高校教員(元も含む)>
〇私は今年度より沖縄で教育活動をしているのですが、平井さんのような「沖縄」に移住するぞ!は可能か考えてしまいました。北海道と沖縄では飛び地という点で共通していますが、沖縄では沖縄出身者が多いし、開拓地ではない。うまく真似て実践できないものか考えながら聞いていました。
〇「戦時下の模擬家族いいよ」と聞いていたので、どうしても参加したい!と思っていた講座でした。模擬家族だけではなく「我が家の20世紀年表」、「よし移住するぞ」etc。あっという間の3時間でした。戦争は重いテーマですが、年表や模擬家族だったら高校生だって大人だって、暮らしがベースなので分かりやすく学び今を見つめる目を自身の中に育てることが出来そうです。目の前にいる高校生verにアレンジしてみようと思います。
<中学校教員>
〇今回の実践報告を受けて、当時の歴史の当事者が自分だったらどうするのか?という問い立て、「自分ごと」として学ぶ社会科学習の実践は、とても新鮮で印象に残るものでした。「自分ごと」に捉える授業の実践、私自身のこれからの授業づくりのヒントにしていきたいです。
〇平井先生の授業実践①家族100年史、②北海道の開拓とアイヌ、③模擬家族は「生徒が「自分事」できる」が共通するキーワードになると思いました。次に、平井先生の授業実践を私自身の授業実践にいかすことができないか、考えてみました。その上でも、今日の授業は生徒にとって「自分事」になっていたかと問い直していきたいです。
〇平井さんの実践のお話は大会でお聞きしたり、歴史地理教育で読んだりしていますが、今日は内容をさらに掘り下げ、さらには授業づくりに対する考えまでも聞くことができ、あっという間の3時間でした。
社会を上から動かしてきた人々による歴史ではなく、この社会の基盤になる部分から動かしてきた民衆、そうせざるを得なかった人々に心を寄せる歴史観が、現代の社会を見つめ、「自分がその立場だったら・・」というエンパシーをもたせることにつながるということに、とても納得しました。
<小学校教員>
〇今回の平井先生の実践を聞いて、工夫次第で「自分事にする」授業が実現できるのだということに気づかされました。簡単にできることではありませんが、もう少し考えてみよう、頑張ってみようと思うことができ、それだけでも今回の講座に参加できてよかったと思います。
<特別支援学校教員(元も含む)>
〇北海道の移住も屯田兵くらいしか今まで授業で扱ったことはあまりありませんでしたが、実際に地図や写真をみるとどれだけ開墾が大変だったかとてもよく分かりました。そして開墾を進めるにあたってそこに生活の基盤を持っていたアイヌの人々の悲しみ・辛さをはじめて理解することができました。社会科の役割として地理・歴史・公民のいずれも「遠くのできことではなく、自分が生きている今と深く関わっているということ、そして、決まっていないこれから先の未来を学んだことからどう選択するのかを真剣に考えてほしいと伝えること」ではないかと強く感じました。
〇特に、授業の内容を生徒が「自分事」として学ぶとはどういうことか。そこを理解することが平井さんの授業論の核心と思いました。アイヌの歴史について構造化された授業 自分事として学ぶことが可能な授業 ―これは、沖縄の歴史、在日朝鮮人の歴史、原発立地地域の歴史等 テーマをおきかえてもできるのではないか。その可能性を平井さんの授業実践から感じました。
〇「北海道に移住する模擬家族」にしても「戦時下の模擬家族」にしても、歴史を「自分ごと」としてとらえる
ことができて、かつグループでワイワイと言い合いながらできるので、生徒たちが社会科が好きになるわ
けだと思いました。
〇生徒が「自分事」に感じる授業をするためには、教師が「自分事」に学ぶことの重さや豊かさを実感しな
ければという平井さんの言葉は、もう退職して久しい自分にも、高校生平和ゼミナールの活動を通じて、
生徒に伝えたいことがあるので、これからも「自分事」として学んでいかなければ…と思いました。
<大学・大学院教員>
〇決まりきった授業のやり方は教えることができます。だが、どう教材を発掘するのか、それをどう料理するのか、どう「自分ごと」にさせるのか。そのセンスの部分は教えることができません。だから、センスを磨きたいのです。「主体性」ってそういうことなんだよね。
〇今回、zoomのブレイクアウトルームを使った場面があった。私と同じメンバーだったのは、大学二年生が二名、大学三年生が1名であった。二年生は、まだ教職の授業を始めたばかりと言っており、大学三年生はまだ模擬授業を始めたばかりと話していた。社会科はどうしても暗記科目と認識されてしまう、という話題が話し合いの最中に出た。社会科を暗記科目と捉える認識は根強く残っている。この問題と向き合うことも我々の課題と言えよう。
<学生>
〇そのため、平井さんの実践の中にもあった、「さあ、北海道に移住するぞ!」は自分の授業と比較したり、知見を広げたりしながら見させていただくことができました。北海道の授業をする上で、北海道の歴史を土台として学ばないわけには行かないことをさらに深く感じることができました。授業作り講座で学んだことを今後にも活かせるよう、また私もたくさん勉強していきたいです。
〇今回の講座で一番感じた事は、何を伝えることを目的に授業を行うのかを明確にすることの大切さです。
〇今回の講座において「自分事として考えさせる」ということの難しさだったり、時間の使い方だったり、学ぶことがとても多くありました。写真1枚1枚に対する意味もしっかりとあり、ただ提示するのでは意味がないということも改めて理解することができました。
〇今回の講座に参加して、現在、教師として現場で仕事をしている方から実際にそこで行われている授業実践を聞いて学ぶことは、教職の勉強をする上でとても大切なことだと感じました。
〇私が今回の講座の3つキーワードを挙げるとすれば、それは「自分ごと、模擬選挙、模擬家族」です。
〇遠い過去のことや離れた地で起きていることを自分事として考えることは容易なことではありませんが、教師が意識して授業を作ることで手助けができると知りました。先達の良い授業を取り入れ、自分の教師としての力に結びつけたいと考えています。
3.司会より
学生28名を含む48名という非常に多くの方が参加してくださいました。今回は、札幌で中学校の教員をされている平井さんが講師ということもあり、北海道からの参加者も非常に多かったです。学生の参加者もオンラインでの開催を始めてから増えてきています。年齢、校種、地域と参加者の広がりを見ると、対面で話せない寂しさやもどかしさはありながらも、オンラインだからこその良さも現れてきたように感じています。
今回の講座では、「主権者としての生徒を育てる」、「生徒が自分事として考えられる授業をする」ことをテーマに大きく3つの実践を紹介していただきました。中学校での実践ではありましたが、小学校に務めている私にとっても、生かせること、考えさせられることが多く、校種や教科を問わず、大事なことをたくさん学ぶことができた3時間になったと思います。
参加者が多かったことを踏まえ、初の試みでしたが、ブレイクアウトルームを使用した交流会の時間も設けました。学生からベテランの教員の型まで、幅広い視点や価値観での意見交流ができ、こちらも有意義な時間になったという感想を多数いただくことができました。今回はグループ分けを完全にランダムにしてしまいましたが、次回はグループ分けや時間配分も工夫することでよりよい交流の場へと改善できそうでした。司会、運営の課題として、次回に生かしたいと思います。
最後に、お忙しい中、講師を引き受け、素敵な実践を提供していただきました平井先生、改めてありがとうございました。各参加者、そして、それぞれが受け持つ子供たちへと今回の学びが還元されるよう、一参加者として、私も努力していきたいと思います。11月講座もオンラインにて開催予定です。こちらも多くの方のご参加をお待ちしています。